『夜の大捜査線』(In The Heat Of The Night)1967米

夜の大捜査線 [DVD]
 ミシシッピーに黒人を立たせれば、映画の内容は分かってしまう。
 最近のアメリカ映画の黒人はとにやくよくしゃべる。陽気さだけがとりえのバカにしか見えぬ。彼等は白人から受ける差別に怒る。しかし、黒人だから差別を受けているように見えない。彼等の騒々しさと図々しさを見ていると、うるさくてうっとうしくて世間から疎まれているだけではないかと思えてくる。
 寡黙で知性を感じさせる黒人もいる。彼等の格好良さは白人と共通の格好良さで、そこには黒人と白人の差を感じない。白人に対する対抗意識も感じない。彼等の演じる黒人からは、その人(役柄)個人の性格と品格が滲み出ている。
 30年以上前の作品である『夜の大捜査線』に出てくる黒人バージルも知性と品格をもった黒人である。見ていて疲れるほどに背筋を延ばしている。背伸びしなくてもいいのに背伸びしているように見える。周りが差別することであおっている面が大きいが、バージルは白人に対抗しようとしている。しかし、彼はあえて対抗しない。しないようにしているというより、白人を見下している。差別意識の残る南部の白人を可哀想にと見ている。
 保安官が出てくる。太ってサングラスをかけてガムをクチャクチャ噛んで……。アメリカ映画の典型的な田舎の保守的な保安官である。もしかして、田舎の保安官像の原型はこの映画が作り出したのだろうか。