重曹

 二人を駅までおくった帰り、ドラッグストアにより重曹を買った。重曹生ゴミの匂い消しと排水パイプの掃除のために買おうとしたのだが、薬局のおじさんが胃薬としてもいいんだよと教えてくれた。痛みはとれないが、胃の不快感はなくなるらしい。
 重曹は大きな箱と小さな箱のものが一箱ずつあった。大きな箱はおじさんが自分で胃薬用に取り寄せたものだそうだ。おじさんは洗濯石鹸ほどの箱の重曹をカウンターの上にデンと置くと、重曹はよく効くんだよと、飲み方のコツと効能を熱く語り始めた。
 3グラムほど――小さじ半分より多め――を水で少しずつ飲むんだそうだ。一気に飲んではいけないらしい。空気も一緒に少しずつ飲むのである。しばらくするとゲップが出るという。大きなゲップが3回ほど出たらすっきりするとおじさんは嬉しそうだった。
 奥様がほうほうと頷きながら聞くものだから、おじさんは調子づいてきた。大きな声じゃ言えないけど市販の薬なんてダメ、重曹を飲んだら一日もしないうちに上から下からどんどん出る――というところで少し言葉を飲んだ。女性を前に「下から出る」といってしまったので調子に乗り過ぎたと思ったようだ。
 ボクはお好み焼きを食べ過ぎた。胃がむかついていてゲップをしたいとずっと思っていた。家に帰ると早速飲んでみた。おじさんのいう通り、水で少しずつ飲んだ。重曹は塩味がした。薄い塩水を飲んでいる感じだった。30分ほどして小さなゲップが出た。1時間ほどで大きなゲップが出た。すっきりした。それから小刻みに小さなゲップがあり、大きなゲップは確かに3回だった。でも下からは出ていない。
 奥様も一緒に飲んだ。奥様はすぐに大きなゲップが1回出た。奥様は少しずつ飲まずに一気に飲んでしまった。そのせいか、大きなゲップは1回だけだったようだ。