ダイニングチェア

 リビングには150センチ幅のダイニングテーブルを置いている。分厚い楢の木のテーブルだ。10万円ほどした。椅子はソファとダイニングチェアを足して二で割ったような椅子を3脚だ。1脚18000円である。この椅子3脚をずらりと出窓の下に並べ、ソファのようにしておいた。そしてその前に楢の木のテーブルを置いている。
 大きなテーブルはボクの夢だった。そのテーブルの上で何でもできる。ご飯を食べるからといってテーブルを片付ける必要がない。本でもノートでも置きっぱなしの広げっぱなしでご飯を食べられる。それが夢だった。
 3脚の椅子の反対側には椅子がない。反対側には普通のダイニングチェアを買おうと思ったが、近所の家具屋ではなかなかいい椅子が見つからない。そこで、新婚旅行から帰ってきた翌週、有明にある日本最大級のショールームだという大塚家具にいった。
 大塚家具には椅子だけではなく、キッチンカウンターも探しに行った。日本最大級のショールームは値段も一流で品揃えも豊富だった。だけど自分たちが欲しいものがない。ただ広いだけで疲れるショールームだった。キッチンカウンターだけなら近所の家具屋のほうが品揃えがよかった。値段も手ごろだし。もちろん、品は大塚家具のほうがいいが。
 椅子は日本最大級のショールームを歩き回ってようやく一脚だけ気に入ったものを見つけた。日本最大級のショールームには椅子だけのコーナーとか、テーブルだけのコーナーというのはなく、すべてセットを組み分散して展示してある。日本最大級のショールームでは、たった一脚の椅子を買うために日本最大級のショールームを歩き回らなければならない。くたくたである。
 くたくたになってもいい。いい椅子が見つかれば。ただ、その椅子は高い。近所の家具屋なら3脚買える値段だ。かなり気に入ったし、奥様専用にいいかと1脚だけ買った。2脚欲しいのだが、1脚だけにした。ボクはしがない万年ヒラのサラリーマンだ。贅沢はいけない。1脚だけでも贅沢だけど。
 奥様の椅子は45000円である。セミオーダーと呼べるのかどうかは知らないが、木の色と布の色を選ぶことができる。木の方はテーブルにあわせて濃い色にし、布の色は芥子色にした。配達まで3週間。その3週間が先週だった。
 届いたのはオーダーとは似ても似つかぬ椅子。形は一緒だが、木の色も布の色も違う。大塚家具のミスなのか、家具メーカーのミスなのかは知。配達前に大塚家具から電話があり、オーダーとは違う椅子がメーカーから届いた、メーカーに再発注したが3週間かかる、それまで間違って届いた椅子を使ってもらえないだろうか……というののだ。単に納品期日を延ばすだけではなく、代用品を貸与するというのだから良心的である。でもまあ、そういうサービス代込みで45000円なのだろうが。
 ともかく、椅子は届いた。でもあと1脚いる。というので、先週、近所の家具屋でダイニングチェアを買った。こちらは16170円。今日、届くというので取りに行った。
 曲がりなりにも椅子はそろった。片側には同じ椅子が3脚並んでいる。反対側にも2脚椅子が並んだが、まったく違うデザインの椅子である。色まで微妙に違う。でも、ボクは気に入っている。3脚のソファもどきはボクが気に入った椅子である。仮の椅子だけど、1脚はは奥様が気に入った椅子である。それぞれが気に入った椅子だ。だから全部気に入っている。