ホッチキス留めで残業代稼ぎ

 今夜も遅くなった。会議資料の準備のためだ。
 非常にアナログな部で、形式主義。だから会議資料は全てペーパーで、ページのナンバーリングも正確で見やすくなければいけない。そのため、途中で挿入資料が出れば全てやり直しだし、一部の資料は手書きでページ数をふる。100部必要なら、100部手書きでページ数を入れる。無駄だ。ページの手書きとホチキス留めのために4、5人が1時間ほど残業をする。すごいコストだ。
 カラーの資料20ページを100部刷った。使うのは15分程。15分の説明が終われば機密資料なので回収し、シュレッダーにかける。何が環境先進企業だ。笑わせる。

日常

 日常が始まった。
 朝、起きるのが辛かった。具体的に何が辛いのか? 自問自答してみた。いやなこと、というか面倒な案件をひとつ抱えている。でも、それは面倒なだけで困難なことではない。その他には懸案はない。販売会社にいたころに比べたら、天国と地獄じゃないか。何も辛いことはない。ただ、長期休暇が終わったことへの漠然とした憂鬱しかないじゃないか――と気が付いたらすぐに起きれた。
 ボクは働かなくてはいけない。

 身体が鈍っている。重いカバンをもって20分ほど歩き、少し緊張して15分ほど立っていただけなのに太ももが痛くなった。ズボンのウエストもきついし太ったかもしれない。運動不足だ。いかん。

『穴/HOLES』(HOLES)2003米

穴/HOLES [DVD]
 邦題がお粗末。原題を直訳しただけ。『穴』なんて、斜に構えた芸術思考の映画のタイトルにしか思えぬ。せっかくの楽しい娯楽作品が邦題で台なし。
 ある少年が無実の罪で非行少年更正施設に送らた。更正施設では、毎日、砂漠の中に直径1.5メートル、深さ1.5メートルの穴を掘ることを義務づけられている――という奇妙なお話。でも、そこには少年の一族にかけられていた呪いなんてのもあって、話はぐっと面白くなってくる。一種のファンタジーなのだが、更正施設が舞台というリアリティがファンタジー独特のうさん臭さを消している。

『バーバー吉野』2004日

バーバー吉野 スペシャル・エディション [DVD]
 小学生までの男の子はみんなオカッパ頭という因習が残る山村。オカッパ頭に刈るのは『バーバー吉野』。男の子はみんな『バーバー吉野』に通う。
 そこへ東京から茶パツの転校生が越してくる……となれば話の展開は読める。『スタンバイ・ミー』と同じ世界も展開する。
 WOWOWガイドの解説によると、もたいまさこがいい味を出しているあった。いい味とほめるには中途半端だ。出し切れてないような気がする。脚本か演出かどちらかが彼女を殺している。道化役の狂人が登場するがこれも中途半端。というかあざとい。半端だ。
 亭主役の男優がさらりといい味を出している。というか明日は我が身と思うと目が離せなくなっただけかもしれない。会社を首になったことを言い出せない気弱な亭主。ボクだっていつ首になるやもしれぬ。首にならなくてもいずれリストラされるだろう。その時、奥様に言えるだろうか。
 亭主も言おうとする。でも、タイミングが悪い。子供が帰ってきて妻は子供を叱ることに夢中だ。言葉を飲み込んでしまう。
 その姿をみて、やはり悪い話は一分でも早く言うべきだと思った。言えるならばの話だが……。
 亭主は父親として背伸びをしようとする。悩む息子に何かいい言葉を授けようとする。そして出てきた言葉は、
「人は置いてけぼりになっても髪の毛は伸びる」
 生きなければいけないのである。「それでも人生は続く」し、「生きられない」と思っても生きてしまう。ホームレスの人生になっても人は生きるのである。どうせ生きるのなら、好きな世界に浸って生きていきたい。でも、そのためには強くなくてはいけない。強いなら生きることに悩まない。
 だったらどうすればいいのだ?

『バッファロー’66』(BUFFALO '66)1998米

バッファロー'66 [DVD]
「生きられない」
 ファミレスのトイレで男がうずくまる。短気で見栄っ張り。だから口から出るのは大法螺ばかり。でも、小心だから何もできずに、自責にかられる。見ていて腹が立つ。でも、「生きられない」とうずくまられると身につまされる。ボクも小心だ。法螺は吹かないけれど、何もできない自分が嫌で仕方がなく、何もできないと思うと、生きていく自信がなくなる。「生きられない」とまでは思わないが、生きていることが不安になる。
 けばけばしくてグラマーないかにも男好きしそうな女がヒロイン。母性本能なのか、男の欠点を全て知りながら恋に落ちる。安易。この二人、とても幸せになれるとは思えない。この二人のその後が、『東京ゴッドファーザーズ』のある夫婦ではないだろうか。

『東京ゴッドファーザーズ』2003日

東京ゴッドファーザーズ [DVD]
 描かれる東京の風景がリアル。実写した物に色を塗っている感じ。見慣れた上野や御徒町界隈の風景だけにリアルさを感じた。
 話は出来過ぎ。偶然の連続。偶然が多すぎる。偶然を引くと何も起こらない。主人公たちは必死にもがき、動くが、彼らの運命は偶然のみが支配する。自ら切り開いたものは何もない。へどを吐きながら走り続けているだけ。
 しかし、何かひかれる。なぜだろう。この世の中、ボクだってホームレスになる可能性がある。ホームレスへの恐怖。気が気でない。彼らの人生が気になり、映画から目が離せなくなるのだろうか。

『下妻物語』2004日

下妻物語 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]
 ダサい。話も月並み。でも面白い。馬鹿馬鹿しくて面白くて泣けた。見え見えダサダサのお涙頂戴物なのに、引っ掛かってしまった。クライマックスでは感動すらした。やられた。
 なぜだろう。ヒロインの二人が一途だからだろうか。一途というと、純粋で汚れがなくてという感じだが、二人は純粋ではないし捻くれている。でも、決して自分を曲げない。他人を受け付けない。孤独になろうとも信念を貫く。否、信念ではないな。自分の好きなことを、楽しいことを貫き通す。貫き通すための苦労や孤独などものともしない。彼女たちは熱い。でも熱くなろうとしていないし、熱くも見えない。だから気持ちいい。
 孤独、涼しげ。ボクの求めるものだ。
 深川恭子、土屋アンナ篠原涼子が熱演。3人共かわいい、きれいだけじゃない。